『レイリ』死にたがりの少女と、武田家滅亡の物語

[レイリのリンク]

岩明均による時代物!なのに読みやすい!!

『寄生獣』、『ヒストリア』で有名な岩明均がシナリオを手掛ける時代物の漫画。代表作を挙げておいて申し訳ないが、私はこの2作をまだ読んでいない。代わりと言ってはなんだが、『七夕の国』、『雪の峠/剣の舞』は読んだ。非常におもしろかった。だが、読みにくさも感じた。なんというか、とっつきづらかったのだ。

[雪の峠〜のリンク]

読者のことを考える漫画家、室井大資

レイリにおいて岩明均はシナリオを書くに留まる。多分、縦書きの文章を書くところまでが担当だと思う。ネームから後の工程は別の漫画家、室井大資が担当している。

レイリを読むにあたって氏の作品『秋津』を読んでみた。秋津は、情けなく面倒な性格の父親と、しっかり者の息子のギャグマンガだ。レイリとは毛色が違うがこれもおもしろい。

[秋津のリンク]

このタッグ態勢が大成功だった。レイリ第1巻のあとがきで岩明均もこう言っている。

「秋津」はコメディーである。「笑い」、すなわち「お客のウケ」を考える作家は「独りよがり」にはなりにくい。(中略)漫画制作にあたり、もう1人の「お客を思う」作家(クリエイター)がいろいろ持ち寄ってくれたなら上手い「足し算」ができるだろう。

レイリはこの後、全6巻で綺麗に完結するわけだが、まさにこの言葉のとおりだったと思う。

岩明均による素晴らしい脚本と、室井大資による読みやすいノリ。これが絶妙に合わさっていた。シリアスとコメディのバランスが見事で、読んでいて気持ちがいい。それでいて芯の部分に一流のシナリオが仕込まれている。満足度の高い漫画だった。

読みやすい漫画

レイリはかなり読みやすい。漫画において読みやすさは重要だと思う。

例えばアニメは時間とともに映像が動き、シーンが転換し、話が進んでいく。一方で漫画の場合は自分でページをめくらなければ先に進まない。ゆえに漫画には読者にページをめくらせる能力が求められる。そこに読みやすさが影響する。

読みやすいというのはストレスがゼロ、消費コストがゼロということだ。ただただ物語を享受できるわけだ。紛れもない幸福である。

読みやすさというのは複合的なものだ。絵の見やすさや話の展開、セリフ回しなど多岐にわたる。レイリの場合、特徴的なものが1つある。時代劇ながら言葉遣いが現代風という点だ。

親近感のある言葉遣い

歴史的な言葉遣いというのは端的に言ってかっこいい。

このあたりで1巻の書影を見ておこう。 [img src= alt=レイリ第一巻表紙の画像] レイリ第一巻。原作 岩明均。漫画 室井大資。この時点で勝利を確信する。